とあるデリヘルでドライバーになった話3話
『広君、前に車回しておいてくれる?』
角刈りの店長の平さんが言った。
今日は、僕の初出勤の日だった。
女の子を車に乗せて、お客さんが先に入っているホテルの前まで送迎を行う。
学生時代からちょくちょく飲み歩いていた繁華街。
幸か不幸か酒にしか興味がなかった僕はラブホテルの場所(必ずしもラブホテルとは限らない)なんて全く知らなかった。
よくバイト代をおろしていた銀行の目の前
行きつけの居酒屋の真裏
高級ランチバイキングをしているきっちりとしたホテル(語彙力)
色んな所にお客さんはいた。
『広くんだっけ?初めまして!緊張してる?あ、タバコ吸っていい?』
エレナさんは早口で僕に聞いてきた。
エレナさんは25歳(設定上)。僕よりは年下なはずだが、30過ぎのようにも見える。
初対面ということもあり、新人の僕に対して沢山話しかけてくれる優しい女性だ。
『えー、なんでドライバーなんてしようと思ったの?めんどくさくない?そうだ!あの○○って子性格悪いから気を付けたほうがいいよ!』
性格も良い。
ナビに頼りながら、川沿いにずらっと並んでいるホテルの駐車場に着いた。
『じゃあ、90分後によろしくー』
そういって元気よくエレナさんはホテルの中に消えていった。
「お疲れ様です!」
『お疲れー、あーおっさん全然イカなくてしんどかったわー。あ、タバコ吸っていい?』
エレナさんは気遣いも出来て、優しい女性だと思った。
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